思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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OTC医薬品に関するコラムの連載を開始しています!

 OTC医薬品に関するコラムの連載をファーマトリビューンさんで開始しております!

第1回:総合感冒薬~子供のかぜ薬、どんな薬がイイですか?

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第2回:総合感冒薬~普通のかぜ薬と漢方、どっちがイイですか?

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 保険薬局に勤務していた頃、OTC医薬品の考え方使い方について、体系的に学ぶ機会は、それほど多くないと感じていました。また、OTC医薬品について解説された書籍は数多くありますけど、最新のエビデンスを積極的に引用しながら、その使い分けを論じたものは限定的です。

 僕自身、ドラックストアで勤務する中で、OTC医薬品の使い分けを、どのように考えればよいのか悩みました。確かに薬の作用機序の違いで、(理論的な)効果の差異を論じることはできるかもしれません。しかし、実際にお客さんが感じることができる薬剤効果にどんな違いがあるのでしょうか。正直なところ、風邪薬ならばどれを服用しても大きな差はないような気さえしてきます。

 ところが実際にOTC販売の現場に立ってみると「この薬、いつも飲んでんだけど、良く効くんだよねぇ。他のやつじゃ、だめなんだぁ」なんておっしゃる方や「あのう、◎◎◎という薬はもう売ってないのでしょうか? あれがないと困るんです」とおっしゃる方もいらして、特定のOTC医薬品が特定の人に大きな効果をもたらしている現状が確かにあるのだなと感じました。

 これは薬剤の厳密な効能=efficacyと言うよりは、プラセボ効果や服薬行為に付随する健康行動の影響を含めた実際的な効果=effictivenessによるところが大きいのだとは思います。とはいえ、日常生活において僕たちが実感できる薬の効果というものはefficacyそのものではなくeffictivenessの方です。であるならば、このeffictivenessを最大限に引き出すことこそがOTC販売において肝要なのではないか、そんなふうに思いました。もちろんこれはOTC医薬品に限らず、健康食品やサプリメント、医療用医薬品にも言えることです。

 しかし、effictivenessを意識するあまり、科学的根拠の乏しい医薬品やサプリメント、あるいは健康食品を、さも効果があるように説明することは、ニセ医療と構造的には全く同じです。そうではなくて、efficacyが限りなく小さいのだとしても、やはり科学的根拠は踏まえる必要があると思うのです。

 この連載では、エビデンスベースというところを基盤に、OTC医薬品のeffictivenessを意識した薬剤選択、服薬説明をどのように行っていけば良いのか、僕自身の経験を踏まえてリアルなところを解説していく予定です。薬剤師のみならず登録販売者の方、または一般の方が市販薬を購入する際にお役立て頂けましたら幸いです。