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思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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自己を対象とした疫学的研究デザイン

メモ

Use of self-controlled designs in pharmacoepidemiology. - PubMed - NCBI

 

[ケースクロスオーバ研究]

ケースクロスオーバーデザインは1991年にMaclureによって提唱された。[1]このデザインはデザインはsexual activityと心筋梗塞の急性発症リスクとの関連に関する研究課題のために提示された。従来のコホート研究や症例対照研究では交絡因子の問題における“ゴルディアスの結び目”[2]を必要とするであろう。アテローム動脈硬化症や自律神経障害、うつ症状、あるいは糖尿病や肥満の既往などは、すべて心筋梗塞の危険因子であり、またすべてsexual activityとは逆相関している。したがって、性行為と心筋梗塞との関連を検討するには従来の疫学研究は、これらすべての要因について全て考慮しなければならない。しかし、それらのいくつかは測定が困難であるか、または症例集団と対照集団において一定の侵襲性を伴う測定を必要とする。さらに症例群においては積極的にsexual activityを報告するかどうか議論の余地があるだろう。

 

ケースクロスオーバー研究では症例群[3]のみが解析される。対象者には2つの質問がなされる。「あなたが心筋梗塞を発症した際、sexually activeな状態にありましたか?」「sexually activeは通常、どのくらいの頻度ですか?」これらの質問から、通常の性行為の頻度と、心筋梗塞発症時のsexually activeの状態を比較することで、その頻度が相対的に過剰であったかどうかを決定することができる。[4]

 

ケースクロスオーバー研究は、今日、Maclureにより提唱された通常時の頻度を用いるというデザインはほぼ使用されていない。過去の基準日もしくは期間の設定が使用され、曝露は、これらの基準日を用いて評価される。これは厳密にマッチングしたペアと同等であることを意味する。ケース・クロスオーバーデザインの簡単な例を挙げると、ケースの被験者は、疾患発症時と過去の基準日における薬剤使用が質問される。こうして症例群の薬剤使用者数を計量することが可能となる。この2つの期間を比較数することでオッズ比が算出できる。[5]このように比較は同一被験者内で行われる。したがって、時間枠にわたって安定しているすべての潜在的な交絡特性を効果的に制御することができる。

[セルフコントロールド・ケースシリーズ

セルフコントロールドケースシリーズはFarringtonにより考案された。[6]この研究はケースのみのデザインとして考えればコホート研究のロジックが適用できる。本研究でも同一被験者を対象とするが、ケースクロスオーバー研究とは対照的に、選択された期間における暴露歴だけでなく、研究対象者の追跡時間軸における全曝露歴が探索される。セルフコントロールドケースシリーズの大きな特徴は、症例において定義されたイベント後の曝露歴が含まれており、アウトカムの複数の発生を観察していることになる。[7]結果後のフォローアップを含むことによって、セルフコントロールドケースシリーズは、双方向設計とみなすことができる。[8]従来のコホート研究のように、観察期間のすべての追跡は主要な曝露や潜在的な交絡因子は、により層別化されている。露光及び結果を関連の発生率比は、条件付きポアソン回帰モデルによって推定することができる。分析は、症例となる被験者に限定されている。したがって、遺伝的な感受性のような危険因子は安定しており、結果の推定に影響を与えない。

 

セルフコントロールドケースシリーズは投与、ワクチンの安全性解析に用いられた。この研究により、おたふく風邪ワクチンがワクチン接種の15-25日後に無菌性髄膜炎に関連付けられていることが確認された。[9] また、流行性耳下腺炎、麻疹・風疹ワクチンと特発性血小板減少性紫斑病と熱性けいれんとの関連も検討されている。セルフコントロールドケースシリーズは症例のイベント特定後、あらゆる曝露歴を探索する。

[脚注]

[1] Maclure M. The case-crossover design: a method for studying transient effects on the risk of acute events. Am J Epidemiol 1991; 133: 144–53.

[2] 訳者注:ゴルディアスの結び目(Gordian Knot)とは手に負えないような難問を誰も思いつかなかった大胆な方法で解決しまうことのメタファー

[3] 訳者注:症例対照研究における症例群のみを解析対象とする、とイメージすれば良いだろう。

[4] 訳者注:つまり心筋梗塞発症時とそれ以外の通常時でsexual activityという曝露を比較すると言うこと。

[5] 訳者注:曝露割合を比較しオッズ比を算出する点は症例対照研究と類似しているだろう。

[6] Lancet 1995; 345: 567–9.

[7] 症例ごとに曝露を特定し、そこから曝露期間を設定する。また他の任意の期間をコントロール期間としてイベントの発症率を比較することが可能である。この場合、曝露がある程度長期にわたることが想定されている。一方ケースクロスオーバー研究では曝露は短期間であることが前提となっている。(https://www.pmda.go.jp/files/000164086.pdf 参照)

[8] 訳者注:ケースクロスオーバー研究では後ろ向き研究であった。しかしケースクロスオーバー研究では、イベント発症前後で後ろ向き、前向き双方向での探索を行う。つまり曝露の前後の期間を観察していることになる。

[9] Whitaker HJ, Farrington CP, Spiessens B, Musonda P. Tutorial in biostatistics: the self-controlled case series method. Stat Med 2006; 25: 1768–97.