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思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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医学論文を読むにあたり”壁”となっているものと、それを乗り越えるために…

薬剤師によるEBM実践は、まだまだ普及しているとは言えないように思います。やはり医学論文を読むにあたり様々な壁や問題があるのかもしれません。そうした壁や問題はどこにあるのか、Twitterの投票機能をつかって調査してみました。

・質問①医学論文を読むという事に対する「問題」って何?

 ・質問②いろいろ壁や問題はあるけど臨床医学論文を読みたい?

まずは質問①ですが、こちらは総回答数157票でした。医学論文を読むにあたり障壁となっているものは「統計的、疫学的な知識問題」が最多で36%、次に英語の問題が27%となっています。「時間の問題」と回答した人は一番少なく17%でした。またそもそも興味ややる気がない人も20%ほど存在するという結果でした。

それにも関わらず、質問②では実に87%の人が医学論文を読みたいと回答しています。なお、質問②の総回答数は121票でした。調査にご協力いただきました皆様ありがとうございました。

[論文を読みたいけど、いろいろ壁がある?]

この調査はTwitter上で行われたもので、母集団の背景を特定することは困難です。僕のフォロワーさんの多くが医療従事者であること、医学論文というキーワードを使っているので、回答者の多くは医療関係者だと思われますが、もちろん一般の方も入っているかもしれません。とはいえ、大まかな傾向をつかむには貴重なデータとなりました。

この調査結果から、いろいろあるけれど、やはり論文は読めたほうがいい、そんな印象を持ちました。そして障壁としては、英語の問題と統計的・疫学的知識の問題が、時間的な問題よりも大きいことが分かりました。

なお、Twitterのリプライでは、フルテキストにアクセスできない論文がある、実際に論文結果をどう活用してよいかわからない、という趣旨のコメントもいただいております。これらについては、別の機会に考察してみたいと思います。今回はこの調査結果から浮き彫りとなった英語の問題と統計的・疫学的知識の問題をどう乗り越えていくかについて、整理していきます。

[英語の壁を乗り越える]

僕自身が一番苦労したのが英語です。僕はお世辞にも英語が得意とは言えません。できることなら英語など読みたくありませんが、臨床上、重要と思われる論文は全て英語で書かれているので、英語を読むよりほかないというのが現状です。そんな僕でも何とか英語が読めるのはGoogle翻訳のおかげです。

論文はWEB上で、Google翻訳を使って読む、これが英語の壁を乗り越える基本となります。

translate.google.co.jp

また、基本的な英単語を習得していると、英文を読む効率は格段にアップします。市販の英単語集には様々なものがありますが、さしあたって英語論文を読む場合、英会話的な単語表現は全く不要です。つまりTOEICテスト用の単語集は、論文を読むにあたり必要な語彙を得るには非常に効率が悪いのです。また医学論文というと、薬学英語とか医学英語をやらねばいけないと思うかもしれませんが、基本的な文章読解には、まず大学受験レベルの英単語を知ることが大切です。個人的にお勧めしたいのが、Z会速読英単語、いわゆる「速単」です。

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僕も高校時代お世話になった参考書ですが、英単語を暗記するにあたり、ただ単語のみを覚えていく作業にはかなりの苦痛が伴います。この本は英文を読みながら単語を覚えていくスタイルなので、英文に慣れる意味でも効果的です。これ1冊をマスターすれば、あとは医学論文特有の英単語を何とかしていけば良いわけで、そうした単語に慣れないうちはGoogle翻訳の力を借りることでまず問題無く読めるようになると思います。

[日本語訳を作るのということではなく、英語のまま理解するということ]

英文を読むポイントとして英文のまま理解していくということがあります。

『いいかい。訳せたから読めたんじゃない。読めてるから、必要な場合には訳せるんだ。』(伊藤和夫 ビジュアル英文解釈p23)

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これは駿台予備校英語科の講師だった伊藤和夫先生の言葉ですが、英文を英文として読んで理解できているからこそ日本語に訳せるわけですよね。つまり、日本語に訳そうとしなくても、何が書いてあるか大体のところを理解できる、という事が大切なんです。

英語が苦手な僕が語るのも、いささか問題があるかと思いますが、僕なりの英文を読むコツはまず、主語を見つけることです。長い英文になればなるほど、様々な修飾語や節が付いてきて、ごちゃごちゃしてきますが、まずは冷静に主語を発見すること、ここから始めると読みやすくなります。

Guidelines for type 2 diabetes (T2D) recommend reducing HbA1c through lifestyle interventions and glucose-lowering drugs (metformin, then combination with dipeptidyl peptidase-4 inhibitors [DPP-4Is] among other glucose-lowering drugs).[出典:Rehman MB.et.al.Diabetes Metab. 2016PMID: 27745828 ]

 例えば上の英文、結構長いので気がめいりそうですが、全体をみてまずはカッコ内は無視します。その上で主語を探すのですが、英文は基本的にはS(主語)V(動詞)の順に並んでいます。この文章の場合、冒頭のGuidelinesが主語ですね。次に動詞を探しますがfor 以下はGuidelinesの修飾節であり動詞にはなり得ません。そのまま読み進めていき、recommendが出てきますが、これが動詞ですね。これでこの文章の骨格を見つけることができました。つまり「ガイドラインは推奨している。」ということです。なんのガイドラインなのか、何を推奨しているのか、あとはこういう視点で、英文を読んでみると、 for type 2 diabetes…2型糖尿病の(ガイドライン)、reducing HbA1cHbA1cの低下を(推奨している)、という感じのことが書いてあります。HbA1cはどのような方法で低下させるかというと、ifestyle interventions and glucose-lowering drugs…つまり生活習慣介入や血糖降下薬で、という事になります。さらにどんな血糖降下薬で?ということがカッコ内に書いてあるんですね。

まずは英文を見渡して、文章のコアとなる主語がどこにあるのかを見つけること、次にその主語に対応する動詞を見つけること、これで文章が何を言いたいのかがおおよそ把握できるはずです。

もう一つ例を挙げておきましょう。

Of the 50 intervention trials included in this review, 34 used surrogate endpoints (most commonly, weight loss) as their primary outcome.[出典:Barry E.et.al.BMJ. 2017 PMID: 28052845]

この文章でも同じく、主語となる部分を探します。繰り返しですが、一般的に英語の文章はS(主語)V(動詞)の順に並んでいることが多いのです。しかし、この文章ではいきなり「of」が来ています。”前置詞を含んだ節は必ず主語にはならない”と覚えておいてよいでしょう。つまり上の分で言えばofからreview,までは主語を含んでいないのです。この文章では34(intervention trials)が主語になります。 usedが動詞ですね。つまり”34の介入がサロゲートエンドポイント(代用のアウトカム)を一次アウトカムとして用いていた”というのがメインの文章で、その冒頭に”このレビューに含まれた50の介入研究のうち”という節が来ているんですね。

このように、まずは主語を見つけることを意識すると、英文は格段に読みやすくなります。

[統計的、疫学的知識の問題を乗り越える]

統計学や疫学を学びだすときりがありません。さしあたって医学論文を読むのに必要な最低限の知識は以下の「薬剤師のための医学論文活用ガイド」に網羅されています。

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この本は僕も書いているので、なんだか宣伝みたいですが、医学論文を最低限読むのに必要な統計学、疫学的知識だけでなく、英語論文をいかにして簡単に読むか、また論文結果をどのように活用していくか、その方法論や考え方についても書かれています。論文を読みたいけどどうすれば良いかわからない、という方へ、是非お勧めしたい1冊です。

もう少し統計学の知識がほしいという方へ、医学論文を読むにあたり実用的な統計の本として新谷先生の「今日から使える医療統計」おすすめです。この本を読めば観察研究も含め、まず論文読解に必要な統計学の概念を整理することができるでしょう。

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また、検定や推定、相関など統計学の基礎的な部分をしっかり学びたいというの方には五十嵐先生の「医療統計わかりません!!」がよいでしょう。この本では難解な数式をほとんど使わずに基本的な統計学についてしっかり解説されており、「Σ」アレルギーのある方でも楽に読みこなすことができるでしょう。同書の仮説検定の解説は非常に秀逸です。

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疫学についてもっと知りたいけどおすすめの入門書は?という方に、是非読んでもらいたいのが中村先生の「基礎から学ぶ楽しい疫学」です。この本はタイトル通り、楽しいすぎる疫学の本です。著者のセンスというか、そういったものが随所に詰め込まれていて、これは一般の方にも是非お勧めしたいです。

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疫学についてもっと考察を深めたい方には「ロスマンの疫学」をお勧めします。ロスマンの疫学が日本語で読めることに本当に感謝です。この本は疫学の本というより一つの哲学の本というか、その内容は読み返すたびに新たな発見があります。

ロスマンの疫学―科学的思考への誘い

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統計、疫学については参考図書の解説が中心となってしまいましたが、大事なのは、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、メタ分析の4つの研究デザインの概要を知ること。それぞれの長所や短所、どんなバイアスが想定されうるか、交絡の概念などをしっかり押さえておけば、あとは付け足し学習で何とかなります。

統計学については、平均値中央値の違い、相対危険統計学的推定(95%信頼区間方)統計学的仮説検定(P値)の概念を理解していればまずはOKでしょう。論文を読むだけなら、概念の理解のみで十分であり、計算手法を知る必要はまずありません。(もちろん知っていたほうが何かと得ですが)

 

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