思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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[書籍出版のお知らせ]薬剤師のための医学論文の読み方・使い方

『薬剤師のための医学論文の読み方・使い方』という本が出版されます。僕の師匠、名郷直樹先生との共著です。

薬剤師のための医学論文の読み方・使い方

 この本は、医学論文の読み方・使い方の解説を軸にしながらも、薬の“効果”について、エビデンス構造主義医療論を接続しながら言語化を試みたものです。これまでの僕が模索し続けてきた薬の考え方の全てを言葉にしたつもりです。したがって、現時点で、僕の主著という位置づけになります。

 僕にとってソシュール言語学との出会いはとても衝撃でした。虹は7色ですがrainbowは6色。言葉によって見ている世界が異なっているというのは、薬剤効果についても言えることだと思っています。なぜなら薬の効果という実態は、その概念にしろ、統計データにしろ言葉で記述するより他ないからです。

  こうした考え方に初めて触れたのは、池田清彦先生の「構造主義科学論の冒険」という本でした。

構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫)

 

 名郷先生の医療に対する考え方をもっと知るためには、どうしても読まなければいけないと、そう思ってこの本を手に取りました。僕が哲学に興味を持ったきっかけは、この本との出会いが決定的だったように思います。

  

 さて、本書の企画をいただいたのは実は2015年3月です。もうかれこれ、2年半近くの歳月が過ぎようとしています。4月辺りから執筆をはじめ、その年の秋には企画原案通り、すべての原稿を書き上げていたと思います。2015年末からは編集作業に入る前の原稿確認作業が2016年2月あたりまで続き、そして3月の編集会議で、この企画そのものがほぼ白紙に戻されました。

 

 その理由は、同じく僕が共著で執筆し、2016年3月に発売された『薬剤師のための医学論文活用ガイド(中外学社)』という本との類似性が非常に強く、本書の差別化を図ることが難しいという判断からでした。

薬剤師のための医学論文活用ガイド~エビデンスを探して読んで行動するために必要なこと~

 どちらの本も、僕が全体の構成を企画しており、やはり類似部分は多かったと思います。その後の編集会議で、名郷先生の構造主義医療論を取り入れた、これまでにない論文活用法に関する新しい企画案が作られます。

 新企画での原稿執筆作業は2016年夏から秋にかけて行い、その後も何度か手を入れ直し、ようやく校正原稿を見たときは少し感動しました。2017年3月には初校の校正作業が完了し、2017年5月には再校正が完了。今月発売することとなりました。

  

 本書の執筆に当たり、大変多くの方にお世話になりました。僕の原稿のすべてに目を通し、その内容について適切なアドバイスをしていただいた名郷直樹先生に、この場を借りてあらためて感謝申し上げます。

 また、僕が哲学に足を踏み込むきっかけとなった「構造主義科学論の冒険」の著者、池田清彦先生には、本書の推薦文を書いていただきました。深甚の感謝を申し上げます。

  そして、南江堂編集部の皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。