【地域医療ジャーナル】冷酷なエビデンスからあたたかな医療へ~曖昧性、不平等性、個別性~
僕がEBMに出会い、論文を読み続ける中で膨らんだ一つの疑問。それは『薬が効くとはどういうことなのだろう』というあまりにも基本的な問いでした。
常識的には、薬にはなにがしかの効果があることが前提になっていて、EBMに出会わなければ、こういった基本的な問いにたどり着くことは無かったでしょう。
薬の効果は”どこか”に存在しないと、より正確に言えば”ある”ということにしないと薬学的な知は無意味になってしまう。こういう知を支えている薬剤『効果』が本当に存在するのかを疑い、存在するとすれば、その本質はなんなのかを問うこと、これを僕は”薬の哲学”と呼んでいます。有効性とか安全性とか、薬剤効果をめぐる『~性』とは一体なんなのでしょうか。それは僕らの認識とは独立して存在するものなのでしょうか。
地域医療ジャーナル2017年10月号は企画特集「冷酷なエビデンス」です。
企画趣旨とは少しずれてしまったかもしれませんが、僕は薬剤効果にまとわりつく、ある種の冷酷性を考察してみました。”薬の哲学”に連なる基本的な理論を少しだけ言語化できたように感じています。