思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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健康的な食事で健康を目指すとはどういうこと?【 #地域医療ジャーナル & #ゆる読み 】

 地域医療ジャーナル 2019年11月号 vol.5(11) が発刊されています!僕は『健康的な食事で健康になれるは本当??』という記事を投稿させていただきました。

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 「健康的な食事」というと、ものすごくポジティブなイメージがあって、そこにネガティブさを見つけようとすることの方が困難でしょう。しかしながら、ぼくはどうにも、こうした極端なイメージが苦手なようです。健康的な食事は ”ほとんど良い” と思います。それはそれで間違っていない。でも ”絶対に良い” か?といえば、必ずしもそうでないと思うのです。

 世間一般では、こうした問い建てをすることそのものに、あまり関心が向けられないのではないかと思っています。多くの場合で ”ほとんど良い”ことは”絶対に良い”こととイコールで結ばれている。それはある種の思考停止なのですけど、その思考停止が同時に正義をまとうので、なかなかに厄介です。

 むろん、「健康にわるい食事」を積極的に進めるというのは、なんだかおかしな話です。だからこそ「健康によい食事」を積極的に進めるのは正義になりえるのはよく分かります。でも、僕が気になってしょうがないのは、”ほとんど良い”ことと”絶対に良い”ことの狭間にあるものです。この狭間にあるもの……それがなんなのか?と問われても答えに臆するわけですが、強いて言えば現実世界におけるリアルな「生活」かもしれません。 

 「健康的な食事が良い」と積極的に進めることは、個人が生きることそのものの根幹である生活を、健康のためにどれだけ犠牲できるのかと、そう迫ることに近い。健康を得るために、自分の好まない食材も食べる、好きな食材は食べられない、というように生活が犠牲になる側面が確かにあります。だからこそ、日常のリソースを、どこまで生活を健康(医療)のために使って、どこまでを生きがいに使うか、という議論が必要だと思うのです。このことはまた、どんなことについて寛容で、どんなことについて厳格なのかという議論にも繋がりますね。多くの場合で、そのバランスを決めているのは客観的なルールではなく個人の恣意的なルールだったりもするのですけど……。

 さて、今回の記事で紹介した食習慣と健康アウトカムを検討した論文、BMJ. 2019 Sep 4;366:l4897 PMID: 31484644は、以下の動画でも解説しています!

www.youtube.com

 栃木医療センターの矢吹拓先生と一緒に、ゆる~く医学論文を読もうという企画、略して「ゆる読み」は多くの医療者・非医療者に分かり易くエビデンスを発信することを目的とした動画配信プロジェクトです。論文情報を単に”知識”として扱うのではなく、その知識にナラティブな情報を付加しながら”知恵”として発信することで、よりリアルで伝わりやすいエビデンス発信を目指しています。”客観的であることのみならず、主観的であることを怖れない”というコンセプトで、ゆる~く続けていきますので、ご興味のある方はチャンネル登録していただけると嬉しいです。