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COVID-19アウトブレイクの疫学的特徴(China CDC Weekly)

 中華人民共和国湖北省武漢市において、2019年12月以降、新型コロナウイルス(以下、2019-nCoV)関連肺炎の発生が報告され、中国国内のみならず、世界各国からも発生報告が相次いでいます。本邦でも感染例が確認され、その拡大に対する懸念や警戒が強まっています。

 2020年2月8日までに報告されたCOVID-19に関する主要文献は、以下の記事にまとめてあります。

medical.nikkeibp.co.jp

 中国CDCより、約7万例を解析したレポートが報告されていますので、紹介いたします。 

Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team, [The epidemiological characteristics of an outbreak of 2019 novel coronavirus diseases (COVID-19) in China].
Zhonghua Liu Xing Bing Xue Za Zhi. 2020 Feb 17;41(2):145-151.
doi: 10.3760/cma.j.issn.0254-6450.2020.02.003.
[Epub ahead of print] PMID: 32064853
PDF:https://www.docdroid.net/XyuMmdb/china-cdc-weekly-covid-19.pdf

【背景】中国武漢で発生した2019年の新規コロナウイルス病(COVID-19)は、全国的に急速に広がっている。 本論文では、2020年2月11日の時点で診断されたすべての症例の記述的、探索的分析の結果を報告する。

【方法】 2020年2月11日までに報告されたすべてのCOVID-19症例は、中国の感染症情報システムから抽出された。本研究で解析されたのは ①患者の特徴の要約、②年齢分布と性比の調査、③致死率と死亡率の算出、④ウイルスの広がりの地理的時間的分析、⑤疫学曲線の構築、⑥サブグループ分析である。

【結果】 合計72314の患者記録、すなわち44 672(61.8%)の確定症例、16 186(22.4%)の疑い症例、10567(14.6%)の臨床診断症例(湖北のみ)、および889の無症状症例(1.2%)を解析した。

 確認された症例のうち、ほとんどが30〜79歳(86.6%)で、湖北省で診断され(74.7%)、軽症とみなされた(80.9%)。 確認された症例では、全体で2.32%の死亡率で合計1023人が死亡した。

 COVID-19は、2019年12月以降に湖北省から外側に広がり、2020年2月11日までに、31州すべての1 386郡が影響を受けた。

 症状発症の流行曲線は1月23〜26日にピークに達し、その後2月11日時点で減少し始めている。合計1716人の医療従事者が感染し、5人が死亡した(0.3%)。

【結論】 COVID-19の流行は非常に急速に広がっている。 湖北省から中国本土の残りの地域に拡張するのにたった30日しかかからなかった。 多くの人々が長い休暇から戻ってきたため、中国は流行のリバウンドに備える必要がある。

 

 Case Fatality Rate(致死率)を見てみると、39歳以下では0.2%、40代でも0.4%となっています。以降、加齢とともに致死率は上昇しますが、50代で1.3%、60代で3.6%、70代で8.0%、80代で14.8%となっています。また、性別での解析では男性2.8%、女性1.7%と、男性で致死率が高い傾向にあります。

 また、併存疾患と致死率を見てみると、高血圧合併例で6.0%、糖尿病合併例で7.3%、循環器疾患合併例で10.5%、慢性呼吸器疾患合併例で6.3%となっています。

 

ーーこんな時だからこそ、感染対策について、きちんと学んでおきたいものですね。

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