みんなで考えたポリファーマシー~薬剤師としてポリファーマシーに関わるということ~
2016年12月18日に薬学ゼミナール生涯学習センターで開催された『みんなで考えるポリファーマシー』をファーマトリビューン(PharmaTribune)さんに取り上げていただきました。
取材レポです!今回は青島周一先生の講演。会員登録なしで全文閲覧できますよ♪当日参加できた方も、そうでない方もぜひ!
— PharmaTribune編集部 (@pharmatribune) 2017年2月7日
【みんなで考えるポリファーマシー ―1】https://t.co/ptvenQIPnh#PharmaTribune #薬剤師 #薬学部
みんなで考えたポリファーマシー
— 青島周一 (@syuichiao89) 2017年2月7日
僕が伝えたかったこと、とても丁寧にまとめてくださいました
みんなで考えるポリファーマシー ―1(PharmaTribune ウェブ) https://t.co/7JBHtv5y7x #pharmatribune @pharmatribuneさんから
本講座は3コマ(1コマ90分)構成で、最初の2コマを僕が、最後のしめの1コマを師匠、名郷直樹先生が担当しました。EBMやポリファーマシーに関しては、やや極論気味で語られることも多く、本講座ではそうした思考から脱却して、フラットな立ち位置でこのテーマを考えられるようなキーワードを盛り込んだつもりでした。
この取材記事では僕が伝えたかった内容がとても丁寧に整理されており、Pharma Tribuneさんには本当に感謝です。ありがとうございました。
[ポリファーマシーに対する考え方]
本講座に関する受講者アンケートの結果を、薬ゼミさんからいただいており、その全てに目を通しております。この講座の参加動機として、やはりテーマが魅力と答えた人が多く、ポリファーマシーへの関心の高さがうかがえます。この傾向は今年2017年も続くのかなぁ、と考えています。アンケートでいただいたコメントの概要を少しご紹介いたします。
・ポリファーマシーによって患者の満足度向上につながることもあるという視点を知った。
・減薬することだけがポリファーマシー対策ではないことを知った。
・ポリファーマシーを問題として捉えるのではなく契機として捉える…という意味が理解できたように思う。
・(薬を)減らす=良いこと、ではなく、あくまでの提案の選択肢の一つとして捉える。
・ポリファーマシーのイメージが少し変わった。やみくもに薬を減らすことだけが患者の幸せなのではない。
・ポリファーマシー=悪と思っていたものがより深く考えるきっかけになった。
・エビデンスを評価できているからこそ、患者の価値観も考慮できるという言葉に刺激を受けた。
・多剤併用は悪ではなく状況。
・ポリファーマシーを契機として捉えること、とても腑に落ちた。
・EBMは医師の批評につながると考えていたが、そうではないことが分かった。
・薬を減らすことが単に良いということではなく、患者が幸せになれるかどうか、という目的に沿って考えていこうと思った。
この他、たくさんのご意見をいただきました。ありがとうございました。僕の伝えたかったメッセージが多くの方に届いて、本当にうれしい限りです。
[アプローチとしてのEBM]
本講座の特に前半は僕の主著(?)である、『ポリファーマシー解決! 虎の巻 (薬局虎の巻シリーズ)』に準拠した形式で進行しました。
途中、いくつかグループワークをはさみ、様々な視点や考え方を共有する中で、ポリファーマシーに対する多面的な考察ができるよう配慮しましたが、限られた時間内でなかなか、そのすべてを消化できなかったかもしれません。これはまた、(機会があれば)次回への課題としたいなぁ、と考えています。
ポリファーマシーに対する僕のアプローチの仕方は全面的にEBMの実践に他なりません。「ポリファーマシー解決! 虎の巻」という本もポリファーマシー解消のための本と言うよりは、エビデンスの使い方に関する本と言っても過言ではないかもしれません。
ただ、こうした方法論が、世間一般に受け入れられているか、というと必ずしもそうではないように思います。むしろ批判的な意見も多いのです。
Amazonのカスタマーレビューを見れば一目瞭然ですが、薬剤師の立場でEBMというとやはり、エビデンスを武器に、医師の治療方針を否定する、というような印象が強いのかもしれませんね。
これについて、僕自身いくつかの論考で間接的に応答しています。医師と薬剤師とでエビデンス情報を共有するに当たり注意すべきことや、薬剤師による減処方提案の具体的なステップについては、南山堂さんの『治療 2016年 12 月号』に掲載されている「患者・医師にエビデンスを伝える」という論考にまとめてあります。
また、薬剤師の立場でのポリファーマシー介入アプローチとして疑義照会だけでなくエビデンスを踏まえた処方提案に関して解説した論考「真の疑義照会とは? 〜医師と薬剤師でポリファーマシーを防ぐ」は羊土社さんの『Gノート 2016年10月号 Vol.3 No.7』に掲載されています。
Gノート 2016年10月号 Vol.3 No.7 今日からできる薬の引き算 ポリファーマシー対策~多職種連携が解決のカギ! |
[みんなで考えた課題]
本講座の後半ではグループワークを通じて、ポリファーマシーに対するアクションプランを考えていくというスタイルを中心に進めました。課題として多く挙がったのは、やはり医師、患者とのコミュニケーションの問題でした。多忙な日常業務の合間に、処方介入の起点となるようなコミュニケーションをどう構築していけばよいのか、僕自身も悩ましいところだと感じています。その具体的な解決戦略としては…
・定期的なコミュニケーションの場を設定する
・医師と共同の勉強会、往診同行、地域医療活動への共同参加
・医師への情報の伝え方を工夫する
・お薬手帳の活用
・医師会、薬剤師会との連携
・残薬や検査値に変動があった時がコミュニケーションをとるチャンス
・トレースレポートの活用
・患者アンケートを作成し医師と共有
この中で、僕自身とてもいいなぁ、と思ったのは患者アンケートの作成です。保険薬局では初来局時に作成しているかと思いますが、これを初来局に関わらず実施してみると言うものです。例えば、「残薬はありますか?」という質問意外にも、「困っていることはありますか?」などの質問事項を盛り込み、この調査を起点に医師と連携のきっかけを探ることができるかもしれませんね。僕自身、風邪処方に対する抗菌薬の患者満足度調査を行ったことがありますが、こうした調査は、医師だけでなく、患者さんとのコミュニケーションの起点にもなりえます。
また得られたデータは患者視点の客観データとして、医師に対する説得力も大きなものとなるでしょう。”錠剤の大きさ”と”飲みにくさ”の相関関係など、僕自身やってみたいアンケート調査のネタはたくさんあります。
[今後の課題として]
本講座では、もう少し具体的なアプローチ例を知りたい、というようなご意見も頂きました。時間の都合上、話しの内容は概要中心となってしまい、僕自身の経験例はあまりお話しできなかったかもしれません。特に成功例だけでなく、失敗例も知りたいと言うような意見もあり、確かにこれは是非シェアしなければなあ、とあらためて思いました。処方提案への介入アプローチはあまりうまくいかないことももちろんあります。うまくいかないからこそ、何が原因だったかを良く善く考察し、次回へつなげていくことが大切ですね。
本講座の締めくくりには名郷直樹先生が登壇されました。久しぶりに師匠のご講演を拝聴した気がします。
まさにこの一言に集約されていると思います。
2011年、EBMと出会って、5年半の歳月が流れようとしています。ほんの少しですが前進しているような気もしています。とは言え、先が見えるような話ではありませんね。本当にわからないことだらけですが一歩ずつ歩くしかありません。その歩みの一つ一つを確かなものに変えてゆけるよう、今後も模索を続けたいと思います。
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