日本語によるグーグル検索で医学論文情報を効率的に収集するコツ
理論による「予測」や「説明」と経験・観測・実験に基づく「実証」が組み合わされて理解が進んでいく(重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論p16)
上記引用は、安東 正樹さんの『重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論』という本からの一文です。
サラッと書いてありますが、これは非常に重要なことです。自然科学における客観的知識をどう理解していくかというやや哲学的な問いに対する、かなり明確な思考原理と言えます。
こうした思考原理について、同書では冒頭、アリストテレスからコペルニクス、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインまでの流れをわかりやすくまとめてあるので、重力波に興味のある方にはお勧めです。
前置きが長くなりましたが、つまるところ、薬学領域においても、予測や理論だけでなく、経験・観測・実験に基づく情報(臨床医学に関する疫学的研究の論文情報)を入手しなければ薬剤効果を論じることはできません。こうした情報をいかに入手するかが重要なポイントなのですが、以前、僕はnoteにPubMedを使わない臨床医学論文検索方法をご紹介しました。
この記事で僕は「グーグルなどの一般的な検索エンジンを使う場合、医療情報においては『日本語で検索した情報はほとんど役に立たない』」と述べましたが、やはり英語での検索そのものが負担に関してしまうことは現実的にはありますよね。
もちろん英語での検索の方が、良質な医療情報が入手できる可能性が高いと言えるのですが、今回は日本語でのグーグル検索でも、なんとか良質な医療情報に効率的にたどりつくコツのまとめてみたいと思います。
[「調べたいテーマ」+「地域医療日誌」で検索する]
調べたいテーマに加えて“地域医療日誌”というワードを追加しグーグル検索をかけてみてください。例えば「インフルエンザワクチン 地域医療日誌」で検索すると、(図1)のようになります。
(図1)「調べたいテーマ」+「地域医療日誌」で検索
「地域医療日誌」とは東京で診療に従事されている医師の@bycomet先生が運営されているブログです。論文情報に基づいた医学情報をわかりやすく解説したブログで、根拠論文も明確に記載してあります。必要に応じて原著論文を容易に参照することができます。
また、(図1)で3つ目に検索された「薬剤師の地域医療日誌」とは僕のブログなんです。このブログは臨床医学に関する論文抄録を1日1本、和訳して更新し続けているものです。このブログ内を検索することでも探したいテーマの論文が見つかるかもしれません。僕自身も仕事で活用しています。
「地域医療日誌」というキーワードを入れることで、医学論文情報をベースにした2つのブログメディアが上位に検索されてくると言うわけです。調べたいテーマの論文情報を大まかにつかみたい時など、まずは試してみると良いかもしれません。
[「調べたいテーマ」+「”研究デザイン名”」]
グーグル検索は医療従事者のみならず、当然ながら一般の方も使用します。グーグル検索で上位に挙がってくるのは、むしろ非医療従事者のアクセスが高いコンテンツであり、こうした情報の多くは論文情報が明確に示されていません。つまり、調べたいテーマについて、一般の人も検索キーワードとして使っているような言葉で検索しても、なかなか論文情報にたどり着くのは困難だと言えます。
そこで、一般の方が使う可能性の低い言葉でかつ、論文情報に関連する言葉をキーワードとして付け加えると、日本語検索でも良質な情報にたどり着ける可能性が高くなります。
(図2)は「インフルエンザワクチン+ランダム化比較試験」で検索した結果です。
(図2)「調べたいテーマ」+「”研究デザイン名”」で検索
この検索でトップに表示されているサイトはMEDLEYという医療情報サイトです。
このサイトのニュース記事では、各記事の最後に、引用した論文のサイテーションとPubMedへのリンクが記載されています。ここから論文情報にアクセスできるわけです。
このように、キーワードを工夫することにより、より論文情報にアクセスできる可能性が高い検索をすることができます。
[医学情報に関するおすすめWEBサイト]
論文情報に基づいた医療情報サイトをいくつか知っておくと、情報収集効率が格段と上昇します。最後に僕のおすすめサイトをいくつか紹介します。
■CMEC(Community Medicine Evidence Center)
CMECとはCommunity Medicine Evidence Centerの略称です。エビデンスの大部分は英語のため、医療従事者にとっても、患者にとっても利用が難しいのが現状です。 そこで、その英語の壁を乗り越えるために、日本語による論文要約の年間購読サービス(有料)を2010年10月4日から開始しています。妥当性の高い論文情報をA4用紙1枚で日本語要約してくれているので、背景エビデンスをざっと整理する際や、論文情報を参照したいけど時間の無い時など、非常に便利です。
■EBM Library™
EBM Library™は日本の臨床医のEBM実践をサポートするデータベースサイトです。個人的には循環器トライアルデータベースや循環器疫学サイトをよく利用しています。主要な臨床試験について、その研究概要が日本語でわかりやすく書いてあり、また専門家医師のコメントなどもついていて参考になります。トライアル名での検索も可能です。
■NEJM日本語アブストラクト
N Engl J Medの論文抄録を日本語で公開しているサイト。南江堂さんが運営しています。N Engl J Medの最新論文が抄録だけですが日本語で読めます。
和文献の検索ならば、J-STAGEはお勧めです。「J-STAGE」とは科学技術振興機構が構築・運用している、科学技術情報発信・流通総合システムのことです。国内学会誌などの日本語文献であれば、このサイトから検索することで比較的容易に論文情報を収集することができます。
■ROCKY NOTE
ROCKY NOTE (ロッキーノート) ~地域医療総合ページ~
一つの臨床疑問について、エビデンスベースでまとめた記事を公開しているWEBサイトです。まさに実臨床での悩ましい問題に対してEBMの実践記録そのものといえるかもしれません。臨床で疑問に遭遇したら、まずこのサイトを検索してみると、すぐに探していた情報が見つかることがあります。
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他者の「死にたいという思い」に対してどう向き合えば良いのだろうか