思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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存在論を勉強してみるー現代存在論~メタ倫理学~科学実在論~心という難問-

 僕たちの目の前には様々な存在があります。”ソンザイ”なんていうと、なんとなく堅苦しいですけど、例えば、目の前にはパソコンが存在していて、テーブルの上にはリンゴが存在している、というような感じです。そんな存在とは何か」という根本問題を研究する学問を存在論(ontology)と呼びます。

 「パソコンは本当に実在するか?」 と問われて、僕らは「当たり前でしょっ!!」って思うわけです。でもこれが「原子は本当に実在するか?」となると、ちょっと戸惑うこともある。何せ、原子を自分の目で直接見た人はいないから。ただ、原子くらいだと、高校の教科書にも載っている常識的な概念なので「存在しない」と考える人の方が少ないかも知れません。しかし、これがニュートリノになるとどうでしょうか。

 あるいはこう考えても良いでしょう。目の前のリンゴは確かにあるのだけど、そのリンゴには「甘さ」という性質が存在するのでしょうか。「甘さ」や「赤さ」はリンゴの側に実在しているのか、それとも、その都度、人によって認識されるものであって、客観的な事物としては存在しないのか……。こうした事物の実在、非実在を巡る議論が存在論の大きなテーマといえます。以下、存在論に関連する書籍を紹介します。

【現代存在論講義 I――ファンダメンタルズ】

現代存在論講義I―ファンダメンタルズ

 哲学を専門的に学んでいなくても読みやすい存在論に関する入門書です。現代存在論について、基本的な事項を体系的に学ぶことができると思います。この世界に、いったい何が、どのように存在しているのか。存在について、より上手く説明する理論とは何なのか。様々な立場の考え方が分かりやすくまとめられています。

【メタ倫理学入門】

メタ倫理学入門: 道徳のそもそもを考える

 倫理学は大きくメタ倫理学規範倫理学応用倫理学の3つに分けることができます。一般的に倫理学と言うと、どのような道徳や判断が善いのか(あるいは正しいのか)を探求する規範倫理学を思い浮かべる人も多いでしょう。メタ倫理学とは、そもそも「善い」とはどういう事か、というテーマを扱う倫理学の一分野です。本書は、日本で初となるメタ倫理学の入門書であり、道徳的真理の実在を巡る議論を丁寧に紐解きながら、メタ倫理学上の主要な立場や理論を非常に分かりやすく解説しています。

科学的実在論を擁護する】

科学的実在論を擁護する

 科学的なモデルの中に登場する電子や光子や波動関数といった対象は本当に実在するのでしょうか。僕らが直接的に観察することができない科学理論の対象が、本当に実在するのかを巡る議論を丁寧に解説しています。科学哲学分野における現代の動向を日本語で読める貴重な書籍と言えます。

【心という難問 空間・身体・意味】

心という難問 空間・身体・意味

 誰しもが他者の痛みや悲しみを感じることはできません。ならば、他者の悲しみや痛み、あるいは「心」そのものが本当に実在していると言えるのでしょうか。人それぞれ的な考え方はまあ、相対主義っぽくて良いのだけど、やはり相対主義は僕らの直感からするとひねくれているように思ってしまうこともあります。僕の見ている風景は君と同じ風景であって、僕が過ごしているこの時間は君の感じている時間と同じもの。できることならそんなふうに思いたい。素朴実在論擁護の鍵は「空間」・「身体」・「意味相関性」にありました。