思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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【書籍紹介】3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた ~有害事象の評価から、副作用の評価へ

 薬の副作用について、その種類は学べど、副作用かどうかの見極め方を学ぶ機会は少ないように思います。そんな中、副作用のみかた・考え方を体系的に整理した書籍が発売されました。

3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた

 

『どんな人にも絶対有効で、絶対安全な薬など存在しません。あるのは、その薬によって得られるかもしれない恩恵(ベネフィット)と、起こるかもしれない副作用(リスク)のバランスが患者さんとって、社会にとって受け入れ可能な薬だけです(3ステップで推論する副作用の見方考え方P2)』

  副作用を含め『薬の効果』というものを考えるときに大切な事は、まさにこの文章に集約されているといっても良いでしょう。

 

 本書の冒頭、第1章にはとても大切なことが書かれているように思います。特に、タイプCの副作用(対照群との比較でしか因果関係が判断できない副作用〔Meyboomらによる副作用分類〕)についての説明が印象的です。

『どんな薬でも副作用として記載されている事象がたくさんありますが、「その薬を使う集団では、その薬を使わなくても一定の割合で発現するような事象」に印をつけてみてください(3ステップで推論する副作用の見方考え方P7)』

  添付文書の情報だけではタイプCの副作用評価が困難であることの理由を、これほどまで鮮やかに例示した文章を僕は知りません。

 

 副作用の可能性について、薬剤と副作用の『因果関係の可能性は否定できない』という思考から、『因果関係の合理的な可能性がある』へと、マインドセットを変えていく中で必要スキルは一体何か? 本書で提案されている方法論はとてもシンプルです。

①被疑薬が原因である「もっともらしさ」を考える

②被疑薬以外が原因である「もっともらしさ」を考える

③「不確かさ」を大切に、総合的に判断する

 薬剤師が臨床の現場で副作用を疑う際、最も困難を伴うのがステップ②だと思います。本書では豊富な具体例をもとに、臨床推論を駆使した実践的なプロセスが詳細に記載されています。

 

  有害事象の評価から、副作用の評価へ。“副作用をサイエンスとして学び、臨床に応用する”という本書のコンセプトは、これまでの副作用のみかた・考え方を大きく変えるものだと思います。『因果関係に合理的な可能性がある』かどうかを判断するために、僕もじっくり学びたいと思います。