薬の効果、その視点を変えて眺めてみる―表現としての薬剤効果
「高血圧治療ガイドライン2019」において、降圧目標として推奨されている血圧値は130/80mmHgでした。この推奨は、ランダム化比較試験19件のシステマティック・レビュー&メタ分析に基づいています。詳細は以下のエントリにまとめてあります。
統合結果に大きな影響を与えているのは、やはりSPRINT試験のように思います。収縮期血圧の目標値を120 mmHg 未満とする強化治療群は、140 mmHg 未満とする標準治療群と比較して、心筋梗塞/その他の急性冠症候群/脳卒中/心不全/心血管系の原因による死亡の複合心血管アウトカムが有意に低下させる( ハザード比0.75[95%信頼区間 [CI] 0.64~0.89])というものです。
25%のリスク低下と言われると、わりに大きな効果サイズであるような印象を受けます。実際、有効性に関して”強いエビデンスがある”といわれるスタチンでは、プラセボ比で30%程度、心血管リスクを低下させます【図1】。
【図1】スタチンの有効性を検討した主要な大規模臨床試験
一般的に、ランダム化比較試験によって検証される薬剤の有効性は、介入群と対照群のイベント発生率の比で示されます。イベントを発症した人に注目して、その比をとるわけですね。25%低下とか、30%低下というのは比で示した場合の効果サイズです。
しかし、イベントを起こした人だけに注目しなくてはいけないルールはありません。そして、イベントを起こしていない人に注目すると、薬剤効果のインパクトががらりと変わります。
下の図は、SPRINT試験におけるイベントを起こした人に注目した場合の比で示した薬剤効果表現と、イベントを起こさなかった人に注目した場合の差で示した薬剤効果表現を並べてみたものです。
『厳格な降圧を行うと標準的な降圧に比べて心血管イベントが25%低下する』という左側の棒グラフと、『厳格な降圧を行うと標準的な降圧に比べて心血管イベントを起こさない人が98.35%から98.81%に増える』というのでは、薬剤効果の印象がまるで異なることでしょう。
薬剤効果に関して、イベントを発症した人に注目して比で示すと、効果を大きく表現することができますし、イベントを起こさない人に注目して差で示すと、効果を小さく表現することができます。
製薬企業が作成してる製剤パンフレットの多くは、薬の効果について左側の図のような棒グラフで示されていることでしょう。これは表現として、効果を多く見せる工夫がなされているわけですね。
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