【書籍】 Rp.+ レシピプラス 2019年夏号 Vol.18 No.3- 心不全治療のパラダイムとTOPCAT試験
南山堂さんの『Rp.+ レシピプラス』2019年夏号の特集は心不全です。
循環器疾患の終末像たる心不全は、高齢化が進む日本の臨床において、避けては通れない病態と言えましょう。
心不全を考える上では、薬物治療だけでなく、循環器に関する病態生理から電解質異常、輸液など広範囲にわたる知識を整理する必要があります。本特集では基礎から臨床まで丁寧に整理されており、心不全とその治療薬について体系的に学ぶことができるでしょう。
さて、JJCLIPとの連動企画「臨床疑問のゆくえ」も、心不全をテーマとした論文抄読会を取り上げ、そのディスカッションを言語化しました。
テーマ論文は、HFpEF患者に対するスピロノラクトンの有効性を検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験、TOPCATです!
この論文、非常に読みやすく書かれており、ランダム化比較試験論文を初めて読む方におススメです。また盲検化や複合アウトカムの解釈をめぐるディスカッションでは、貴重なご意見を多数いただき、既にこの論文を読んだことがある方でも、新しい気づきがあるかもしれません。
さて、心不全に対するスピロノラクトンのランダム化比較試験といえば、1999年に報告されたRALESです!
同試験において、HFrEF患者にスピロノラクトンを投与すると、プラセボと比較して、総死亡リスクが、なななんと、30%低下することが示されているのです!死亡単独というアウトカムを3割減らすという効果サイズは、ちょっと最近の研究では考えられないほど大きいという印象です。しかし、TOPCATでは……。
もちろん、TOPCATの被験者はHFrEF患者ではなくHFpEF患者です。HFpEFの薬物治療において、決定的に有効な治療法に関するクリニカルエビデンスは、現時点で限定的であるというコンセンサスがあります。しかし、TOPCATとRALESの被験者背景を比べてみるとあることに気が付きます。そのあることとは、心不全治療のパラダイムシフトと呼ぶべき何か……なのですが、続きは本連載を読んでいただければと思います。
ちなみに『薬局』6月号の特集は、がん治療と薬物相互作用でしたね!まだ読めていませんが、こちらも大変興味深いテーマですっ。