思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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糖尿病治療アップデートにおすすめ書籍と、GLP-1受容体作動薬の有効性の要約について

【糖尿病治療アップデートにおすすめ書籍】

 DPP4阻害薬をはじめ、SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など、いわゆる新規2型糖尿病治療薬の大規模臨床試験の結果が、相次いで報告されています。この分野は情報の更新が目まぐるしいく、またその量も膨大なため、効率よく情報収集する必要があります。そんな中、医学書院の『medicina』5月号、南山堂の『薬局』7月号の特集記事がとても参考になりました。

medicina(メディチーナ) 2019年 5月号 特集 糖尿病診療の“Q" 現場の疑問に答えます

薬局 2019年7月号 特集 「糖尿病患者のフォローアップ ― 継続的な薬学的管理と患者支援の実践 ― 」 [雑誌]

 『medicina』の特集では、糖尿病治療薬について、その使い方の基本的な考え方と主要な文献情報が整理されているので、効率よく最新の臨床情報が整理できると思います。また『薬局』の特集では、糖尿病利用薬の副作用や、合併症のフォローなど、継続的な薬学的管理に関する実践的な知識が整理されています。

 

【新規糖尿病治療薬、心血管アウトカムに対する効果を要約してみる】

 昨年末から今年にかけて、新規2型糖尿病治療薬に関する大規模臨床試験の結果がいくつか報告されていますが、これまでの主要文献を【表1】にまとめます。

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【表1】新規2型糖尿病治療薬の主要な大規模臨床試験とその結果

 GLP-1受容体作動薬のエビデンスはかなり充実してきましたね。経口製剤など、今後の展望にも期待が募ります。個別の研究結果はどれも似たり寄ったりという印象ですが、EZRを使って7研究の結果をメタ分析してみました。

f:id:syuichiao:20190710170537p:plain【図1】GLP-1作動薬の主要大規模臨床試験7研究のメタ分析(解析ソフトはEZR)

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【図2】図1におけるメタ分析のファンネルプロット

 心血管アウトカムに対するGLPー1受容体作動薬の有効性は、ランダムエフェクトモデルによる統合でオッズ比0.87、95%信頼区間は0.81~0.94という結果でした。概ね予想通りです。全体的に心血管イベント抑制方向なのかなぁ、と言う気もしますが、これら研究の外的妥当性は必ずしも高くはありません【図3】。研究に組み入れられた患者の多くは心血管ハイリスク患者であり、一般的な2型糖尿病患者の背景とは異なる集団でした。

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図3】研究に組み入れられた米国2型糖尿病成人の割合推定(Diabetes Obes Metab. 2019 Feb 3. PMID: 30714309 )

 メタ分析の結果だけを眺めるのではなく、個別の研究を丁寧に紐解きながら、引き続き考察を重ねたいと思います。