【書籍】2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望
ぼくらの世代は、人生の中でも最も多感であろう10代を、90年代という時代の中で過ごしてきました。情報通信技術の黎明期から成長期を一気に駆け抜けた90年代。ポケベルからPHS、そして携帯電話へと連なる通信端末の移り変わりをリアルタイムで経験してきた唯一の世代でもあります。
そんな90年からゼロ年代へと続く平成の世は、コミュニケーションの有り様からエンターテインメント、そして学びの仕方まで、あらゆるライフスタイルを大きく変容させた時代だと言っても良いかもしれません。
令和へと続くこの10年間を振り返ってみても、ぼくたちのライフスタイルは大きく変化しているはずです。その背景にはあるのは、やはりスマートフォン端末の爆発的な普及でしょう。
かつて通信手段の中核を担っていた電話機は、今や端末に搭載されているアプリケーションの一つであり、ツイッターやフェイスブック、あるいはゲームアプリと同列の価値を帯びたツールにすぎません。さらにスマートフォン端末はコミュニケーションツールとしての機能のみならず金融、教育、レジャーなどあらゆる生活ジャンルに強い影響力を持っています。スマートフォンが普及するする以前の2010年から、現在の生活状況、社会構造を想像することができたでしょうか?
10年先の未来を予測することすら難しい時代を僕たちは生きている。少なくもそう考えたほうが良いかもしれません。時代の変化をもたらす要因が複雑化しているうえ、その変化のスピードそのものが早すぎるのです。
落合陽一さんの「2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望」を読みました。
SDGsとは持続可能な開発目標のことで、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されています。地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)をスローガンに、2015年9月の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標です。
落合さんは、SDGsの項目を足掛かりに10年先の世界を描き出します。「これからの社会は今までとは全く違ったルールによって営まれる」ことは間違いありません。このようにやっておけば大丈夫、というような方法論がないからこそ、クリエイティブな発想が独自のイノベーションを生み出すカギになるのではないかと思っています。そのためには良質な情報を多面的に考察するスキルが必要なのかもしれません。
本書は全編を通じてグラフィカルな紙面で構成されており、直感的にも内容を把握しやすく、これからの10年を考える有用な材料となりそうです。