思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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「人間以後」をいかに考えるかー新しい哲学の教科書 現代実在論入門

 科学は事実なのか、それとも解釈なのかと問うた時、相関主義と呼ばれる哲学は後者を解とする。存在が何であるかは人間の認識条件に依存しており、人は無条件的な物自体を認識できないのだと、そう考える。

 とはいえ、科学的言明が人の認識の上でしか存在しないのなら、僕たちが寝ている間、月は存在しないのだろうか……。

 

 確かに経験に基づく観察では、事実と解釈をより分けることは不可能である。であるなら思弁的なリアリズムの探求こそが実在へアクセスするための唯一の方法。思弁的実在論と呼ばれる思想的立場を皮切りに、近年、実在論への回帰に関心が集まっている。そんな新しい哲学をこれまでの思想的立場と対比しながら横断的に学ぶことができるのが『新しい哲学の教科書(講談社選書メチエ)』である。

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新しい哲学の教科書 現代実在論入門 (講談社選書メチエ)

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新しい哲学の教科書 現代実在論入門 (講談社選書メチエ) [ 岩内 章太郎 ]


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 本書は「新しい-哲学の教科書」ではなく、「新しい哲学-の教科書」である。メイヤスーの思弁的実在論からハーマンのオブジェクト指向存在論、ガブリエルの新しい実在論まで、幅広く現在実在論を網羅している。現在実在論は認識という有限性を超えて「人間以後」を思考する。結局のところ、僕たちは因果性を深く信じ、世の中は打てば響くようになっていると信じているけれども、今その信念の是非が問われているのだ。