思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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【書籍発売のお知らせ】視野を広げるエビデンスの読み方―医学論文を読んで活用するための10講義―

 エデンスという言葉は保健・医療分野のみならず、情報技術分野、あるいは金融業界など、ビジネス用語としても広く用いられています。とはいえ、生活レベルの会話において、エビデンスを語る機会は少ないように思います。日常生活はエビデンスに裏打ちされるような何かではなく、むしろ感情によって豊かさを享受しうる人の生そのものです。

 エビデンスという言葉を口にするとき、僕たちは何を考え、どんなことを期待し、そしてどんな判断や決断を下そうとしているのでしょうか。エビデンスが証拠という意味で使われる限りにおいて、そこには客観性や普遍性への関心、あるいは証憑性の担保という意図が垣間みえます。あるいは、人間の主観的な認識に基づく価値判断から脱却することで、科学的であろうとする態度と言っても良いかもしれません。

 とはいえ、科学的な態度が必ずしも人の生活を豊かに、そして人に幸福をもたらすものではないように思います。人の生活をより豊かにするために、医療者はエビデンスをどう活用すれば良いのでしょうか。

  中外医学社さんより『視野を広げるエビデンスの読み方-医学論文を読んで活用するための10講義』という書籍が出版される予定です!EBMに関する書籍として、(意外にも!?)僕の初めての単著であり、僕がこれまで論文を読む中で学んできたノウハウの全てを体系的に整理した内容となっています。

視野を広げるエビデンスの読み方?医学論文を読んで活用するための10講義?

 

chugaiigaku.jp

 実は本書、独立行政法人 国立病院機構 栃木医療センターの後期研修プログラムの中で、EBM学習の一環として、僕が担当させていただいた研修会が元ネタです。

tochigi.hosp.go.jp

 2018年4月から2020年3月にかけて行われたレクチャー内容に基づき、エビデンス、すなわち臨床医学論文の実践的かつ効率的な読み方、そして論文結果を多面的に考察するために必要な視点について、講義形式でまとめてみました。

 これまで臨床医学論文を全く読んだことがない方、統計や英語の読解に自信のない方でも容易に読み進められるよう配慮しています。また、書籍の帯「論文情報を見る、論文情報から見る」を見てもお分かりいただけるように、本書は金芳堂さんから出版させていただいた「医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル」からのステップアップとしても読むことができます。

医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル

 

www.kinpodo-pub.co.jp

  既にEBMを実践され、数多くの論文に触れている方にとっても、論文結果の解釈をめぐる議論は興味深く読んでいただけることでしょう。さらには、EBMに関する教育に携わっておられる方にも有益な示唆を得られるものと考えています。

 栃木医療センターでの研修会は、これまで僕が実践してきたEBMを見つめ直すきっかけになっただけでなく、参加してくださった先生方から多くの気づきを得る貴重な機会となりました。研修会の中で頂いた数多くの質問や意見は、本書の内容にも反映されています。このような機会をくださった栃木医療センターの内科医長、矢吹拓先生に改めて感謝を申し上げます。