思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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【地域医療ジャーナル】避けがたい現実と未来 2021年01月号 vol.7(1)

 医療系ウェブマガジン、地域医療ジャーナルの最新号が公開されました。2020年、僕の原稿がウェブ上にアップされるのもこれが最後です!「避けがたい現実と未来」新型コロナウイルスの感染拡大は、僕たちの生活や道徳、文化、そして経済にまで大きく変容を加えようとしています。コロナ禍におけるこのような変化が僕らの健康にもまた少なくない影響をもたらしました。

 今回はコロナ過における生活の変化が健康状態や社会認識にどのような影響をもたらしうるのかについて、論文情報を紐解きながら考察してみました。

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 コロナ禍では、生活習慣が感染予防という要素を大きく取り入れ、これまであまり関心を払われなかった対象にさえ、感染リスクという概念が付与されるようになりました。感染拡大は阻止せねばなりません。しかし、一方で僕たちの文化的な生活が阻害されることにも、少なからずの違和を感じます。健康を維持することと、不健康を許容すること、そのバランスをどう調整していけば良いのでしょうか。

 

熊代亨さんの「健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて」は示唆に富みました。

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて

印象に残った文章をいくつか引用しておきます。

「後世の人々から見ても、この目的と手段のひっくり返ったような2020年の健康をめぐる風景は、健康のためのテクノロジーや知識に通念が引っ張られた、アンバランスな一時代として顧みられるのではないだろうか」
健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについてp41

「医療者は統計学的・生物学的なエビデンスに基づいて健康リスクを語るが、何が良いことで何が悪いことか、健康や長寿は何のためのもので、何のために生きるのかについては語らない」

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについてp116

『それでも私たちは、通念や習慣の奴隷になってはいけないし、現代社会のありようを当たり前だと思いすぎてはいけない』
『法制度の枠組みを遵守し、空間設計に覆われながら暮らすことと、それらに盲従し、何も考えなくなることはイコールではない』
健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会…… p272

 さて、2020年もあと数時間で終わります。本年も大変お世話になりました。

来年もよろしくお願いいたします。

皆様、どうぞ、良い年をお迎えください。