思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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【書籍の紹介】医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

 医療、健康情報をブログメディア等で発信する場合、どうしてもその根拠となる論文情報(エビデンス)を引用する必要がありますよね。できれば論文に使われている図表もそのままブログに転載できると、視覚的にもわかりやすい記事を作ることができます。

 しかしながら、ここでたびたび問題になるのが著作権です。論文の図表転載を行う場合、一般的にはcopy right clearance centerにアクセスしてそれなりの転載料を支払う必要があります。しかしながら、個人でブログ記事作成を行う程度であれば、これはなかなかハードルの高い作業ですよね。

[著作物とは]

 そもそも著作権として保護されている、「著作物」っていったい何でしょうか。著作権法第二条第一項によれば、著作物は以下のように定義されています。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう

 ここで重要なのが、思想又は感情の「表現」というところです。例えば、文章表現において、すべての文章コンテンツが著作物に該当するわけではなく、あくまで著者の思想又は感情を創作的に表現した箇所のみが著作物に該当するというわけです。

 誰が書いても、このように書くしか書きようがない、というコンテンツには著作権は付与されません。例えば論文の結果に示されている数値データは、客観的事実に他ならず、それは思想や感情の創作的な表現ではありません。しかし、それを図表にした場合に創作性が付与されることがあるというわけです。論文の図表の転載が難しいのは、そこに著作物性が色濃く反映されているケースがあるからです。

 では、論文データを使って、自分で図表を作り直せばよいのか、というと、端的にはそれで「OK」ということになります。しかし、表現方法が類似していたりすると、複製や翻案に該当するケースもあり、いずれにせよ慎重な対応が必要となるでしょう。これは講演などで使うスライド資料に論文情報を転載する場合も同様です。

著作権のキホン]

 ブログ等でエビデンス情報を広く一般に紹介することはとても大切なことだと思います。しかし、コンテンツ作成側には、常に論文情報の引用・転載という観点から著作権にどう配慮するか、という問題が付きまとってきます。ブログのアクセス数が増えるほど、こうした問題には慎重になる必要があるでしょう。そんななか、医療情報に特化した著作権の基本的知識を学べる書籍が発刊されました。

医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

 身近な著作権に関する悩みを基本的な事項から丁寧に解説した本となっています。僕自身、NPO法人の会報誌を編集する立場でもありますので、本書で著作権のキホンについてしっかり勉強したいと思います。