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ランダム化比較試験の外的妥当性と、結果に示される効果の大きさは相関する?

 薬事日報さんの薬学生新聞で連載させていただいてるコラム「これから薬の話をしよう」、今回はランダム化比較試験の外的妥当性についての話です。

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 臨床研究における外的妥当性とは、示された結果が広く一般化できるかどうかに関する度合いのことですが、本コラムでも指摘したように、ランダム化比較試験は必ずしも外的妥当性に優れた研究デザインではありません。

 例えば、同コラム「侮れないプラセボ効果でもご紹介した、腰痛症に対するランダム化比較試験 では、プラセボだと分かってプラセボを飲んでも疼痛が改善したという驚きの結果が報告されています。

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 しかし、このランダム化比較試験の参加者は「 “a novel mind–body clinical study of chronic low back pain”( 慢性的な腰痛に対する、革新的な心身的研究 )」というコピーで、ソーシャルメディアや雑誌広告などを通じて募集されていました。従って、研究に参加した人たちは、この研究で行われる治療法に対して、大きな期待や関心を抱いていた可能性が高いといえます。このような期待や関心が、より大きなプラセボ効果をもたらしたのかもしれません。

 さて、このような言い方が適切かどうかは分かりませんが、臨床試験において、ポジティブな結果を出すためにも、被験者の組み入れ基準は重要です。裏を返せば、外的妥当性の低いランダム化比較試験ほど、よりポジティブな結果が出るよう、厳密に組み入れ基準を設定した研究だということもできるでしょう。では、外的妥当性の低さと示された研究結果の効果サイズは相関するものなのでしょうか。

 本コラムでも紹介した「PMID:30714309」のデータと、各GLP1作動薬のランダム化比較試験データを用いて検討してみました。外的妥当性については、一般的な成人2型糖尿病患者の研究組み入れ割合、そして効果サイズについては、各ランダム化比較試験で示されたハザード比の点推定値を用いて、散布図を作成すると【図1】のようになります。

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【図1】RCTの外的妥当性と効果サイズ

 解析例数が少ないので、解釈は難しいですけど、外的妥当性の高さとハザード比の点推定値に相関性を見て取ることは困難です。

 また、外的妥当性とハザード比の点推定値を2本の折れ線グラフで示したのが【図2】ですけど、やはり相関性を見て取ることは出来ません。

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【図2】各研究の外的妥当性と効果サイズ

 もちろん、疾患領域にもよるかもしれませんが、外的妥当性が低いからと言って、必ずしも研究結果がポジティブになるとは限らないのかもしれませんね。