思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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薬剤師として医療・健康情報とどう向き合うか:「医療・健康情報を読み解く」最終回

 日経ドラックインフォメーションオンラインで連載をさせて頂いていた「医療・健康情報を読み解く」は今月で最終回です。約3年間にわたる連載にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

medical.nikkeibp.co.jp

 この三年間を振り返ると、我ながら徹底的に医療情報と向き合ってきたなぁと、あらためて思います。注目を集める医療・健康情報は多いですけど、情報の解釈だけが独り歩きをしていて、肝心の情報に関心を向ける機会が少ないのではないでしょうか。情報から解釈だけを抜き取ること、それは、このコロナ社会でより顕著だったのではないかと思います。

 僕たちは天気図に関心があるのか、それとも、お天気キャスターの発言に関心があるのか、どちらなのでしょうか。そう考えた時に、お天気キャスターの言うことに耳を傾ける機会は多くとも、天気図を自ら読み解こうと考える人は少ないように思います(むろん気象に興味がある人は別でしょうか)。情報を読み解くにはそれなりに専門性がいりますし、なにより思考に負荷がかかります。お天気キャスターが分かりやすくお話をする「解釈」の方が、情報の取り扱いが圧倒的に楽なのです。

 でも、僕らは医薬品情報を扱う専門家です。気象予報官が気象に関する様々な事実データを分析して予報を作成するように、薬剤師は薬に関する様々な事実データを批判的に吟味して、その効果を予測し、臨床に役立てていかねばなりません。解釈を鵜呑みにするのではなく、事実から合理的な解釈を生み出すこと、そしてその解釈を生活の中に落とし込んで、非合理的な部分を考慮に入れつつ、実際的な決断をしていくこと、その一連のプロセスこそが専門性と呼ばれるものなのだと思います。

 本連載は具体的な事例をもとに、医療・健康情報を読み解いてきましたが、その思考プロセスの根幹にあるもの、医療情報の読み解き方のノウハウは以下の書籍にまとめてあります。

医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル

 また論文の実践的な読み方については以下の書籍にまとめました。

視野を広げるエビデンスの読み方?医学論文を読んで活用するための10講義?

 合わせてご参考になりましたら幸いです。