思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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学会ではワークショップやシンポジウムの開催は不要なのか?

日本の学会って、一般演題よりも、シンポジウム・ワークショップのほうが演題数が多く、発表時間が長い。何の結論も出ないようなシンポジウムやワークショップをいくらやってもしょうがない。 このような意見をツイッターで目にした。学会とはおそらく学術大…

学びを駆動するために~勉強の哲学-中動態の世界-観光客と誤配~

ツイッター等のSNSで話題になっていた人文・思想系の書籍、3冊を読んでみた。このブログでも少し触れたことがあるが、その三冊とは、東浩紀さんの「ゲンロン0」、國分功一郎さんの「中動態の世界」、そして千葉雅也さんの「勉強の哲学」である。 ゲンロン0 …

[書籍]薬のデギュスタシオン2 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために

比較を論じる際に大切なのは、差異を見出そうとしている観点です。この場合の観点とは、差異化を試みる際に着目する人の関心と言えるかもしれません。つまるところ、二者の比較とは、両者の間に、なんらかの関心に基づく視点(観点)を持ち込み、その観点で…

[地域医療ジャーナル 2017年06月号 vol.3(6)]臨床と人文知をつなぐ試み。

地域医療ジャーナル2017年06月号 vol.3(6)が発刊されています。 cmj.publishers.fm 僕は薬剤効果の不平等性についての論考他、3つの記事を投稿させていただきました。 まずは、これまで当ブログや、地域医療ジャーナルの「開かれた医療とその敵」でも模索を…

醜いアヒルの子と中動態の世界

國分功一郎さんの「中動態の世界 意志と責任の考古学」を読んだ。 中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) 僕は中動態の世界と医療との接続を考えている。もう少し考察を重ねたいので現在再読中だが、これまで整理できたことを少しまとめ…

【地域医療ジャーナル2017年05月号】ウィキペディア時代の医療情報

地域医療ジャーナル2017年05月号 vol.3(5) が発刊されています cmj.publishers.fm 僕は情報をテーマした記事を書きました。 cmj.publishers.fm インターネットが普及し、僕たちは情報化社会の真っただ中を生きています。沢山の情報に囲まれることは、それだ…

『薬剤効果の不平等性』に関して

”心臓病の発症が約30%減る”というのと、”119人に対して約5年間治療を行うと、そのうち一人だけ心臓病から救うことができる(NNT=119人)”というのはプラバスタチンという薬剤に関する、同じ薬剤効果の記述である。(Lancet. 2006 Sep 30;368(9542):1155-63.…

ゲンロン0を読んでいる。~観光客、動物、そしてポストモダン~

「郵便的…」以来の集大成と言われる東浩紀さんの「ゲンロン0」を読んでいる。 ゲンロン0 観光客の哲学 まだ全体の3割くらいしか読み進めていないけれど、そのテクストには多くの刺激が詰まっている。それはまるで、ロールプレイングゲームのラストシーンで…

『調べること』と『知っていること』

野崎まど さんの『Know』という小説を読んだ。とても面白かったので一気に読んでしまった。 know (ハヤカワ文庫JA) 本作品は近未来の京都を舞台にしたSF小説である。脳の一部電子化という設定で、世界は情報化社会から超情報化社会へ変貌を遂げる。そして…

精神科薬物療法とアドヒアランス~やはりしっかり飲んだほうが良い?~

アドヒアランスと臨床アウトカムについて、以前の記事では主に慢性疾患領域に関してまとめました。 syuichiao.hatenadiary.com 今回は精神科領域における薬物治療とアドヒアランスについて整理したいと思います。精神科薬物療法の臨床アウトカム評価というの…

noteコンテンツ一覧(2017年1月~2017年4月)

noteを本格活用し始めてから約3か月たちました。利用される方に有用なコンテンツをお届けできているか不安な部分もありますが、記事も増えてきたので一度ここで整理しておきます。是非ご活用いただけたら嬉しいです。 《sponsored link》 note.mu note.mu no…

『不在の哲学』~薬剤効果の実在と不在について~

中島義道さんの「不在の哲学」(ちくま学芸文庫)を読んだ。 不在の哲学 (ちくま学芸文庫) なんと、文庫本のための書き下ろしだそうだ。本書は客観的・統一的な脱自己中心的世界としての「実在」ではなく、対立概念である「不在」こそが「真にあること」ではな…

【地域医療ジャーナル 2017年04月号】~新しい学びの形を考える~

地域医療ジャーナル 2017年04月号 vol.3(4)が発刊されています。 cmj.publishers.fm 僕は「小説と権威と、学びの“かたち” ~権威介在型モデルから消費者生成型モデルへ~」というなんだか長ったらしいタイトルの記事を書きました。医療というテーマからは少…

薬はしっかり飲めと言われるけど、本当のところどうなんでしょう?

[コンプライアンス、コンコーダンス、アドヒアランス?] ”薬を医師の指示通りしっかり服用することは大切だ”という価値観があります。薬を医療従事者の指示通り飲まないことは、何かネガティブな印象はあれど、そこにポジティブな価値は付着していない、と…

【Rp.+(レシピプラス)よく出る漢方薬ABC】~連載:臨床疑問のゆくえ~

早いものでもう4月。レシピ+の2017年春号が届きました。今回のテーマは「よく出る漢方薬ABC」と言うことで、総論から各論まで、漢方素人の僕には、とてもありがたいテーマです。特に各論は、実際の臨床現場で良く使われる漢方薬が解説されていて、とても実…

【薬局2017年4月号】~認知症対応力のエッセンス~

南山堂さんの”薬局4月号”「認知症対応力のエッセンス」が発刊されています。具体的な対応力のエッセンスと言うことで、まだ読み始めたばかりなのですが、興味深い記事が満載です。 薬局 2017年 04 月号 [雑誌] 2025年には認知症者が700万人を超えると言われ…

「薬局薬学」という名のテクスト:『薬局で使える実践薬学』

文章を書くというのは、あれやこれやと、様々な情報を網羅して、その完成度を高めていく、そんなふうに考えている人もおられるでしょう。つまり、情報を一つ一つ積み上げながら、文章の全体が構築されていくという仕方で。 しかしながら実際に文章を書いてい…

一番強い痛み止めはどれですか?やっぱりロキソニン®ですか?

ドラックストアに勤務していると「一番強い痛み止めはどれですか?」と効かれることも多いでしょう。市販されている解熱鎮痛剤は同じブランド名でも複数の製品が存在して、その中からどれが一番効く薬なんだろうってお客さんも必死なわけです。(そうでもな…

【書籍】『患者さん中心でいこう、ポリファーマシー対策 -意志決定の共有と価値観に基づく医療の実践-』

近年、ポリファーマシー関連の書籍が複数出版され、やや飽和状態なのかな、という印象もあったりします。そんななか、新たにポリファーマシーに関する書籍が出版されます。 日常臨床を一歩進める!患者さん中心でいこう、ポリファーマシー対策意志決定の共有…

小説を書いてみて気が付いた”学びのカタチ”

小説と言うと、純文学や大衆文学のようなものを、文庫本なり単行本なり紙の本でじっくり読むもの、というイメージを持っている方も多いと思います。しかしながら、現在の小説という概念は、10年前のそれと、かなり異なっているよう思います。それはむしろゲ…

[哲学]×[医療]で見えてくるもの~開かれた医療とその敵~

地域医療ジャーナルでの僕の連載「開かれた医療とその敵」が完結しました。この論考は、医療情報に対する僕の思想的立場をまとめたものです。連載タイトルにあるように、その多くはカール・ライムント・ポパーの批判的合理主義の考え方に基づいています。 cm…

時間は実在しない?マクタガートの「時間の非実在性」を読んでみた。

ジョン・マクタガート(John McTaggart)は「時間の非実在性」という論文(Mind.1908.17: 457-73)で時間が実在しないことを論証している。時間が実在しない、というのはなかなか驚くべき事態であり、個人的にはやや魅力的なテーマでもあるが、その論文の全訳が…

日本語によるグーグル検索で医学論文情報を効率的に収集するコツ

日本語でのグーグル検索でも、なんとか良質な医療情報に、効率的にたどりつくコツのまとめてみました。

[書評的な何か]人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか~アンドロイドと心の存在論的考察~

[人間の機械化] 人間の機械化というのは、何もSFの話だけではない。語弊を恐れずに言えば、現代医療において、生体組織の機械化というものは治療の一部として既に受け入れられているのではないか。「機械化」とう言葉に違和感があるのかもしれない。それは…

みんなで考えたポリファーマシー~薬剤師としてポリファーマシーに関わるということ~

2016年12月18日に薬学ゼミナール生涯学習センターで開催された『みんなで考えるポリファーマシー』をファーマトリビューン(PharmaTribune)さんに取り上げていただきました。 ptweb.jp 取材レポです!今回は青島周一先生の講演。会員登録なしで全文閲覧でき…

医学論文、活用の仕方がわかりません!!~論文情報活用のヒント~

前回は『医学論文を読むにあたり”壁”となっているものと、それを乗り越えるために…』と題して、Twitterの投票機能を使った調査に基づき、医学論文を読むにあたり、障壁となっている問題点を取り上げ、それをいかに乗り越えていくかについて、参考となる書籍…

医学論文を読むにあたり”壁”となっているものと、それを乗り越えるために…

薬剤師によるEBM実践は、まだまだ普及しているとは言えないように思います。やはり医学論文を読むにあたり様々な壁や問題があるのかもしれません。そうした壁や問題はどこにあるのか、Twitterの投票機能をつかって調査してみました。 ・質問①医学論文を読む…

WELQ問題から学ぶ医療情報の「正しさ」とは何か~トンデモ医療と妥当な医療の境界~

WELQと日経メディカルはどこが違うのか:日経メディカル https://t.co/42ZgIEmvRQ #日経メディカル — 青島周一 (@syuichiao89) 2017年1月20日 医療に関するブログメディアを複数運営する僕の経験からすると、ウェルクと日経メディカルの差は記事内容の『正し…

ベンゾジアゼピン系薬剤をどう考える?~「これで解決!ポリファーマシー」~

日経DIオンラインで連載している僕のコラム、『これで解決!ポリファーマシー』が更新されました。 ケース15 有害リスク軽減のために提供できる選択肢は?ベンゾジアゼピン系薬の依存を心配する68歳男性(要無料会員登録) 今回はベンゾジアゼピン系薬剤のお…

高齢者薬物療法において薬剤師が留意しておきたい、たった一つのこと。

超高齢化社会なんて言うわけなんですが、薬剤師業界においても、高齢者薬物療法に注目が集まっているように思います。日本老年薬学会や高齢者薬物療法認定薬剤師制度の発足がそれを裏付けているとは言えないでしょうか。 高齢者薬物療法が注目される背景には…

潜在的に不適切な仕方で用いられているキノロンの影~小児への処方実態から考察する~

添付文書上、フルオロキノロン製剤(以下キノロン)は、その多くが小児に対して「禁忌」となっている。添付文書上の小児とは一般的に15歳未満を指すが、厚生労働省が公開した第1回NDBオープンデータ(H26年04月~H27年03月)を調べてみると、キノロンが小児…

noteの本格的な運用を開始します。

noteの本格的な活用を開始します。noteとは、クリエイターと読者を繋ぐサイト「cakes」などを展開している株式会社ピースオブケイクが立ち上げた個人向けのメディアプラットフォームです。 note.mu 見た目や機能は個人的にはツイッターと似ている部分も多い…

年頭所感〜時間の積層性を意識して~

吉浦康裕さん監督、脚本、制作の『ペイル・コクーン』という2005年の短編アニメーション映画を見た。 studio-rikka.com ペイル・コクーン [DVD] 新品価格¥29,971から(2017/1/27 09:26時点) 歴史の連続性が途絶えるほどの未来で、過去の世界は僕たち人間にと…

薬剤効果に関する思想的立場「構成的実在論」の提唱

論文「薬剤効果の構成的実在論」が地域医療ジャーナルに掲載されました。 cmj.publishers.fm 薬剤効果の構成的実在論は、僕が思索を続けてきた薬剤効果に対する思想的立場であり、実臨床で薬剤効果を考えていくうえでのメタ原理となるものです。この思想的立…

今年1年の思索を振り返り思うこと~希望へ模索と後ろめたさの自覚~

[過酷なるニーチェ] 中島義道さんの文章は心えぐられるようなリアルな文体が好きなのだが、河出文庫から新刊が出てたので無意識に購入していた。 過酷なるニーチェ (河出文庫) 作者: 中島義道 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/11/08 メディア: …

ポリファーマシーへの関わり~EBMの手法に対する批判と応答~

ポリファーマシー。ここ数年、思索を続けてきたテーマである。いわゆる多剤併用問題という認識を持つ人は多いかもしれないが、突き詰めると、薬物療法の根本的な考え方、認識という問題に行きつくような気がしている。ポリファーマシーへの関わりとしていく…

高齢者のてんかん

[高齢者てんかんの原因] てんかんは従来、比較的若い世代の疾患という認識でしたが、近年では高齢者においても一般的な疾患であることが示されています。(図1) (図1)年齢別新規てんかん発生率(Lancet Neurol. 2005 Oct;4(10):627-34、図はDtsch Arztebl…

自殺をしたいと言う想いにどう向き合えばよいのだろうか、という考察を始めたい。

[精神疾患と自殺]精神科領域の医療において、考えるべき真のアウトカムとは何だろうか。もちろん、精神疾患症状の改善、例えば治療応答だとか、寛解と言うものが挙げられるだろうが、「疾患を抱えたまま生きていく」、というようなことが現実であろう。症…

NDBオープンデータから垣間見る薬剤使用の現実

『第1回レセプト情報・特定健診等情報データベースNDBオープンデータ』が厚生労働省のホームページに公開されている。 www.mhlw.go.jp 公表データは医科診療報酬点数表項目、 歯科傷病、 特定健診集計結果、 薬剤データから成る。薬剤師としては、是非薬剤…

新規糖尿病治療薬の臨床試験をめぐるあれこれ

[新規糖尿病治療薬の臨床試験] 近年、新規経口糖尿病薬の大規模臨床試験は心血管アウトカム関して、プラセボに対する非劣性というデザインで研究されている。非劣性試験とはコントロール群に比べてアクティブ群が少なくとも臨床的に劣っていないかを検討す…

『理論』と『現象』(2)

科学理論が措定する実態を僕たちはナイーブに観察できない。したがって、僕らは認識しうる現象と客観的知識の整合性をもってして実態と対応してるであろう理論を暫定的に真理として解釈しているに過ぎない。以下、記事を参考にしてもらえれば幸いだが、それ…

医療は人を癒せるのか

医療は人を癒せるかをテーマに拙文を掲載していただきました。僕の論考を含め6つの記事が掲載されている『地域医療ジャーナル』10月号の特別企画はとても興味深いです。現代医療の中で失われてしまったのは癒しの力ではないか、そういった観点[1]から組まれ…

『理論』と『現象』

『科学理論は本質的に暫定的なもの、永遠に暫定的仮説であり続けるものなのである』(ポパーの科学論と社会論p16) 理論とは科学理論に代表されるように、つまりはこの世界を説明しうる究極の真理と言えるようなものである。例えば素粒子物理学における超弦理…

[本の紹介]構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫)

池田清彦先生の「構造主義科学論の冒険」を改めて読んだ。もう何回目だろうか。いまだ理解しているとは言い難いが、整理できたことを言語化しておく。 構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫) 作者: 池田清彦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/06/10 メ…

ポリファーマシー問題…問題が問題なのかもしれない。

今日は、ポリファーマシー問題の複雑性について話をしてきた。 この問題は世間ではわりと単純化されやすい。「絶対に飲んではいけない薬」などのテーゼに代表される医療否定論は世間の注目を集めやすいためか、巷の週刊誌で特集が組まれるなど、その社会的影…

【書籍出版のお知らせ】ポリファーマシー解決!虎の巻

『ポリファーマシー解決!虎の巻』が出版されます。本書は日経DIオンラインコラムで連載中の「これで解決!ポリファーマシー」がベースになっていますが、その内容は大幅に加筆されています。僕の初めての単著となる本ですが、これまで整理してきた薬の考え…

〔論文〕薬剤効果の構成的実在論

”思想的、疫学的、医療について”いつかは論文化したいと思っていました。 今回、薬学領域における哲学的論考として「薬剤効果の構成的実在論」を”地域医療ジャーナル”に原著論文として投稿しました。 現在、初稿が掲載されていますが、パブリックレビュー中…

自己を対象とした疫学的研究デザイン

Use of self-controlled designs in pharmacoepidemiology. - PubMed - NCBI [ケースクロスオーバ研究] ケースクロスオーバーデザインは1991年にMaclureによって提唱された。[1]このデザインはデザインはsexual activityと心筋梗塞の急性発症リスクとの関連…

【JJCLIP】平成28年度第4回薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

〔開催概要〕 ■開催日時:平成28年7月24日(日曜日)■午後20時45分頃 仮配信■午後21時00分頃 本配信なお配信時間は90分を予定しております. ※ツイキャス配信はこちらから→http://twitcasting.tv/89089314 ツイキャス司会進行は、精神科薬剤師くわばらひでの…

価値に基づく医療について

[EBMが受けてきた誤解とその背景] 何かを決断する。医療現場において、「決断」を抜きに医療を提供することはあり得ない。そこにはなにがしかの臨床判断が存在する。evidence-based medicine:EBMはエビデンスを踏まえたうえで、患者の想いや、患者を取り巻…