思想的、疫学的、医療について

医療×哲学 常識に依拠せず多面的な視点からとらえ直す薬剤師の医療

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薬の適正使用とは何だろう……「そもそも~」という問いには哲学が役に立つ

薬物療法の適正化、あるいは薬の適正使用とは良く聞く言葉ですが、そもそも適正ってなんでしょう……。 不適切な薬物療法といった場合の不適切性というのは、よくよく考えてみると、捉えどころのないものです。一体、誰にとっての不適切性なのでしょうか。医療…

[メモ]医学的無益(Medical futility)について

本記事は以下の論文を参考にしながら ”医学的無益” についてまとめたメモです。日本語訳のチェックは行っていません。二次利用の際はご注意ください。 Aghabarary M, et al : Medical futility and its challenges: a review study. J Med Ethics Hist Med. …

糖尿病治療薬の服薬アドヒアランス

【summary】■慢性疾患用薬の服薬アドヒアランスは総じて低いものの、2型糖尿病患者の服薬アドヒアランスは決して悪くはない。■糖尿病治療薬の服薬アドヒアランスはDPP4阻害薬で優れ、メトホルミンで劣る。■糖尿病治療薬の服薬アドヒアランスに大きく影響を与…

【薬局 2018年 4月号 特集】 「所得格差時代の薬物治療 ―“経済的負担を軽減したい"患者の訴えにいかに応えるか―」

格差と貧困は、意識なくして混同されがちな言葉かもしれませんけど、道徳的な観点からいえば、両者は別物だと言えます。格差は不平等状態を具現化したものであり、そこには必ずしも道徳的な問題を孕んでいないケースもあります。他方で、貧困とは “不十分な…

すべてについて何かを、何かについてすべてを知るために……

とらわれ続けていたものから視線をそらし、様々な視点から改めて物事を見つめ直すプロセス。何かを学んでいくうえで、僕はこうしたプロセスの繰り返しがとても大切なことだと思います。「この道一筋」というもの大事なことかもしれません。でも、あるテーマ…

【書籍の紹介】医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

医療、健康情報をブログメディア等で発信する場合、どうしてもその根拠となる論文情報(エビデンス)を引用する必要がありますよね。できれば論文に使われている図表もそのままブログに転載できると、視覚的にもわかりやすい記事を作ることができます。 しか…

ヒトパピローマウイルスワクチンの有効性、安全性について

【背景】 2013年6月、厚生労働省予防接種検討部会はHPVワクチンの「積極的な勧奨は一時、取りやめる」との意見をまとめ、対象者への接種の積極的呼びかけを中止するよう自治体に勧告しています。[1] これは、HPVワクチン接種後に、複合性局所疼痛症候群(com…

チョコレートの健康増進効果ってどんなもん?

2月14日はバレンタインデーということで、いくつかチョコレートにまつわる記事を書いてみました。日刊ゲンダイでは昨年報告された日本人を対象としたコホート研究を取り上げてみました。 hc.nikkan-gendai.com この研究では、チョコレートの摂取が多いと女性…

「薬を飲めない、飲まない」問題-服薬アドヒアランスとは何だろう-

学校給食法なる法律があることを、僕は初めて知りました。小学生のころ、何気なく食べていた給食にも、食に関する正しい理解と適切な判断力を養うというミッションがしっかりと規定されているようです。 学校給食法第2条には以下のように学校給食の目的につ…

治療の無益性とは何か―相模原障害者施設殺傷事件と健康増進を巡る考察

もう薬はいりません……という価値判断。終末期における治療継続をめぐる問題や、ポリファーマシーの是正というテーマに向き合うことは、こうした臨床判断の是非について考えることでもある。医療財源が枯渇する現代社会において、”無益な治療”を継続するメリ…

医療がもたらすものは希望なのだろうか?

アルツハイマー病を、簡単な検査で判定することが可能な技術が生まれようとしている……。そんなニュースが飛び込んできた。 www3.nhk.or.jp www.nature.com アルツハイマー型認知症の病理所見として、脳内のβアミロイドの蓄積は知られている。 Hardy J.et.al.…

NPO法人AHEADMAP公式会報誌「臨床批評」について

NPO法人AHEADMAP公式会報誌「臨床批評」の最新号VoL.2 No.1が発刊されています。 臨床批評VoL.2 No.1ダウンロード(PDFファイル) https://aheadmap.jimdo.com/app/download/9129626165/%E3%80%8C%E8%87%A8%E5%BA%8A%E6%89%B9%E8%A9%95VOL.2.No.1%E3%80%8DAH…

情報と主体性、あるいは自由~地域医療ジャーナル【医療】×【情報】~

地域医療ジャーナルに投稿させていただいたいくつかの論考で、情報と情動について考えてきた。情報化社会などとあたらめて言うまでもなく、膨大な量の情報渦巻く現代社会で、僕たちは何をよりどころに主体性や価値判断を追い求めていけばよいだろうか。 ある…

”患者中心の医療”でポリファーマシーは是正されるのか?~患者の価値か、クライテリアか……。

[introduction] 2つ以上の慢性疾患を有する状態、すなわちマルチモビディティは高齢者において決して珍しいものではなく、その存在割合は50~80%と想定される。[1][2] マルチモビディティは死亡や機能低下、健康関連QOLの低下など患者の予後不良と関連して…

利尿薬と尿酸降下薬の処方カスケードについて

■処方カスケード[高血圧etc▶利尿薬▶尿酸値上昇or痛風発作▶尿酸降下薬] 利尿薬の有害反応として電解質異常や血清尿酸値上昇は良く知られている。実際、チアジド利尿剤の使用で、尿酸降下薬治の開始が有意に増加することが後ろ向きコホート研究[1]により示され…

NSAIDと降圧薬の処方カスケードについて

■処方カスケード[疼痛▶NSAIDs▶血圧上昇▶降圧薬] 薬剤誘発性高血圧の原因薬剤としてNSAIDがあげられる。同薬剤は腎プロスタグランジン産生抑制による水、Na貯留と血管拡張の抑制をもたらすことで血圧上昇に寄与しうる。 実際、1994年にGurwitzらにより報告さ…

コリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬の処方カスケードについて

「処方カスケード」なる現象は実在するのだろうか。薬剤追加は薬物有害反応が真の原因なのだろうか。そんなことを少し調べている。今回はコリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬の処方カスケードについて。 ■処方カスケード[認知症▶コリンエステラーゼ阻害薬▶…

【メモ】白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis:LCV)

※本項は個人的な勉強メモです。二次利用される場合は必ず原著論文を参照し、情報の運用をお願いいたします。 【概要】 白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis)は過敏性血管炎の亜型であり、小血管性脈管炎に分類される。[1] 本来は病理組織学的診…

【書籍の紹介】薬剤師・管理栄養士のための 今日からはじめる薬局栄養指導

薬局窓口で患者さんから食事や栄養に関する質問を受けることもあるでしょう。「糖尿病にはこんな食事が良い」とか、「コレステロールが高い人にはこんな食事を」というような患者さん向けのパンフレットもありますよね。 保険薬局の現場において、こうした栄…

言葉の魅力と文章の価値について

だいぶ遅くなってしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。2018年が始まりました。毎年、このブログにも年頭所感のようなものを書いていたのですが、今年の年末年始はある書き物に集中しておりまして、ついついブログ更新をさぼってしまいまし…

臨床をめぐる中動態の世界

現代英語において、文は必ず能動態(active voice)か受動態(passive voice)のいずれかに属するといわれている。しかし、これは何も英語だけの問題だけではなく日本語でも同様であろう。実際のところ、意識しているにせよ、そうでないにせよ、僕たちは能動…

いのちの終わりにどうかかわるか、あるいはその意思決定における中動態の世界

終末医療という言葉がありますが、この「終末」という言葉の明確な定義は存在しないようです。言葉から容易に想像できるように、終末医療とは死にゆく人に提供される医療のこと、そう漠然と捉えるよりほかありません。本項では「死にゆくための医療」と呼ぶ…

こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案

薬剤師による処方提案のノウハウを紹介した書籍が出版されます。 こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案 ※中外医学社公式ホームページ「こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案」 本書は、臨床の最前線でご活躍されている先生方のご協力を得て生…

「読むこと」そして「書くこと」について―情報化社会における学びのスキル―

ネットワークを基盤とした情報化社会がもたらしたもの、端的に言えば、それは「知識の外部化」です。情報化社会は今後もこの流れをますます加速させていくことでしょう。 情報を外部化しつつも外部化された情報を効率よく取り出す。つまり、それは「調べるこ…

【本の紹介】薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100

ある薬剤について、そのベネフィットやリスクを考える際、僕らは「比較」と「関心」に捕らわれています。何と比べて、何がどう優れているか。これは同種同効薬のリスク/ベネフィットを考える際に顕著と言えるでしょう。 医師への処方提案や患者さんへの服薬…

【本の紹介】キャラ勉!抗菌薬データ

とあるワークショップの企画案で、”糖尿病治療薬の特徴をレーダーチャートみたいにできたらよいよね” という話が出たことがありました。各薬剤における「低血糖リスク」「体重への影響」「心血管アウトカムへの影響」「心不全リスク」「死亡リスク」などのア…

【地域医療ジャーナル】冷酷なエビデンスからあたたかな医療へ~曖昧性、不平等性、個別性~

僕がEBMに出会い、論文を読み続ける中で膨らんだ一つの疑問。それは『薬が効くとはどういうことなのだろう』というあまりにも基本的な問いでした。 常識的には、薬にはなにがしかの効果があることが前提になっていて、EBMに出会わなければ、こういった基本的…

日経DIオンラインにて新連載スタートします!

【新連載スタートです】 個人的なお知らせが続いて恐縮ですが、日経DIオンラインにて、新連載がスタートします。 コラム: 青島周一の「医療・健康情報を読み解く」 この連載では、臨床医学に関する学術論文、つまり科学的根拠を取り上げながら、一般的な常…

臨床疑問のゆくえ:Rp.+ レシピプラス2017年秋号が発売されました!

南山堂さんの Rp.+ レシピプラス 2017年秋号が届きました。あっという間に夏が終わりますね~。 今回のテーマは要点ガッチリ!!「認知症高齢者」対応力とのことで、疾患の病態生理から治療薬の薬理・化学構造をはじめ、認知症患者さんのケア全般にわたる実…

薬剤効果の価値判断をめぐる時間割引

新曜社のワードマップは個人的に好きなのだが「心の哲学」が出版されていたので読んでみた。 心の哲学: 新時代の心の科学をめぐる哲学の問い (ワードマップ) 本書は入門書とは言えないけれども、重要なキーワードがコンパクトにまとまっていて、繰り返し参照…